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皆さんこんにちは!
有限会社原建の中西です。
橋は、川や谷、道路や鉄道などの「途切れ」を越えて、人と物流の流れをつなぐ社会装置です。優雅なアーチや軽やかな桁のラインに目を奪われがちですが、その背後には、用地交渉から地盤調査、仮設計画、基礎・上部工の構築、舗装・付属物の取り付け、維持管理計画に至るまで、膨大な意思決定と精緻な工程管理が折り重なっています。この記事では、橋梁工事がどのように「一本の線」になるのかを、計画段階から竣工・引き渡しまでの流れで解きほぐしつつ、現場ならではの勘所を共有します。
橋梁プロジェクトの起点は、交通需要・地域振興・防災ルートの確保など社会的要請です。まず上位計画で必要性を確認し、概略ルートを検討。河川管理者や航路、漁業権、希少生物や文化財への影響を含め、多面的に条件整理します。
予備設計では、橋種(桁・アーチ・斜張・トラス・吊橋など)と支間割、基礎形式(杭・ケーソン・直接基礎)を比較。評価軸は、地形地質・水理・施工性・景観・ライフサイクルコスト(LCC)。ここでの判断が工期・安全・維持費を大きく左右します。
橋は地盤の上にしか立てられません。ボーリングと標準貫入試験(N値)、室内土質試験、弾性波探査、河床材料の粒度、洪水時の流況解析、洗掘の予測、塩害・凍害リスクを総合診断。
軟弱地盤なら深層混合処理やサンドコンパクション、長尺杭が候補に。河川では根固め・被覆工など洗掘対策を設計へ反映。調査は「コスト」ではなく「投資」。十分な前情報が、施工中の“想定外”を減らします。
橋梁工事は仮設に始まり仮設に終わる――よく言われる言葉です。工事用道路、作業ヤード、仮設桟橋、足場、ベント(仮支柱)、落下防止、搬入動線など、本設より先に「工事を支える橋」を作るイメージ。
河川では出水期の通水確保と締切計画、海上では台船・起重機船の配置と風・波の待機基準が要。仮設と言えど、強度・安定・耐風・耐震の検討は本設級。
基礎は場所打ち杭・鋼管杭・PHC杭・ケーソンなどが主流。場所打ち杭なら、ケーシングやベノト・アースドリルで掘削、安定液管理、鉄筋籠の建込み、トレミー打設の品質が肝。
橋台・橋脚は配筋密度が高く、打継ぎ処理・型枠精度・温度ひび割れ対策(打設温度・断熱養生・ひずみ計測)が耐久性に直結。完成後見えなくなる部分ほど、記録と確認が命綱です。✍️
鋼橋では工場で主桁・横桁・リブを製作し、溶接部はUT/MT検査、塗装はSa2.5の素地調整→無機ジンク→中上塗で膜厚管理。PC橋は緊張材配置・ジャッキ緊張・グラウト充填性がコア。
「工場のミリ」と「現場のミリ」を一致させるため、BIM/CIMによる干渉チェック、仮組・現地合わせ、許容差設計を徹底。️
代表的な工法と要点をダイジェストで
️クレーンベント工法:重機搬入性が鍵。仮支柱上で継手接合、スピードは速い。
送り出し(ローンチング):陸側組立→先端仮桁で滑らせる。河川横断◎、摩擦・横ずれ管理が肝。
張出(トラベラー):PC箱桁で左右交互に打設。下部障害がある長支間向け。
ケーブルエレクション:斜張・吊橋。張力管理・耐風対策・振動制御が中核。
どの工法でも、吊り点設計、仮固定→本固定の切替、ボルト本締(トルク+回転角)、現場溶接、風・温度・日射の影響などチェック項目は膨大。長大橋では逐次計測で変位・応力を追う“伴走型施工管理”が効きます。️️
床版(RC・合成・UFCなど)はスタッドのせん断耐力、打設時たわみ、収縮・温度ひび割れ対策が要。防水層→橋面舗装(平坦性調整)→伸縮装置(走行性&耐久)が品質を左右。
高欄・防護柵・遮音壁・照明・標識・排水は、景観と力学の両立を。排水は劣化の起点になりがち。スリット・桝配置と凍結対策を先読みします。❄️
コンクリートはスランプ・空気量・温度・Cl・強度試験体、鋼はミルシート・溶接記録・塗膜膜厚・ピンホール検査を“記録で守る”。
安全はリスクアセスメント→KY・TBMで全員の視点合わせ。墜落・重機転倒・落下物・感電・挟まれ…ハザードを前倒しで潰す。工程はクリティカルパスの見える化で、出水期・強風期・繁忙期を回避。環境配慮(騒音・振動・濁水・粉じん)も並走。
外観・寸法・通り・勾配、ボルト残り回転角、溶接補修、支承据付、伸縮装置のクリアランス、舗装平坦性、排水機能、照明作動、塗膜膜厚を最終確認。必要に応じて載荷試験・動的応答計測で設計値と整合。
引き渡し時に点検・補修計画、点検用歩廊・点検車アクセス、床版更新や耐震補強の余地も共有。維持管理に“バトン”を渡します。➡️
橋梁工事は、構造力学・材料学だけで完結しません。気象・水理・地質・交通・景観・合意形成・災害対応・資金計画が絡み合う“社会装置”の構築です。
一本の橋は地域の記憶になり、人と経済の血流になります。だからこそ、計画・設計・施工の全段階を一本の線で結ぶために、「記録」「可視化」「対話」を怠らない――それが私たちの矜持です。
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私たちが採用において最も大切にしているのは、「人柄」です。
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